青森強制わいせつ冤罪事件
浅沼智也(本名:浅沼智喜)
看護師でトランスジェンダー当事者団体「TransgenderJapan」(TGJP)の共同代表を務めていた浅沼智也さんは、2023年2月、東京都内のホテルで知人女性(A氏)に背後から抱きつく暴行を加えたとされる容疑をかけられた。同年9〜10月、A氏は性的マイノリティ・女性の権利などに関わる複数団体の関係者が参加するLINEグループ内で「TGJPの関係者から性被害を受けた」と告発し、後に浅沼さんの名前が挙げられた。これを受け複数の団体が浅沼さんとTGJPへの批判を強め、TGJPも浅沼さんのメンバー資格を停止した。
2024年3月14日、青森県警は浅沼さんを強制わいせつの容疑で逮捕した。浅沼さんは一貫して容疑を否認し、約4か月にわたり勾留された。同年4月、青森地検は罪状認定を強制わいせつ罪から暴行罪に変更したうえで起訴し、罰金20万円を求刑した。
2026年1月16日、青森地裁は「被告人の暴行を直接基礎づける証拠はA氏の証言のみだが、A氏の証言は信用することができない」と判断し、無罪を言い渡した。控訴期限までに青森地検が控訴しなかったことから、無罪が確定した。代理人の西脇亨輔弁護士は、A氏の告発内容と実際の交友関係の時系列が不自然であったこと、A氏の証言と矛盾する証拠写真が存在したことを指摘し、「この写真がなかったら、えん罪のままだったかもしれない。薄氷の上を歩くような裁判だった」とコメントしている。
浅沼さんは、逮捕後の取り調べで「早く吐いてしまえば、何回も取り調べせずに済む」などと供述を促されたほか、トランスジェンダーであることに関するハラスメント発言もあったと証言している。人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、浅沼さんが弁護人の立ち会いのないまま13回にわたり長時間の取調べを受けたことや、勾留環境において医療アクセスなどトランスジェンダー特有の処遇上の問題があったことを報告している。無罪確定後の2026年2月4日に開いた記者会見では「人質司法の怖さがよくわかった」と述べた。
浅沼さんは、自身の刑事裁判が結審する前の2025年3月、人質司法の被害を受けた他3名とともに、勾留・保釈の根拠となる刑事訴訟法の規定(60条1項2号、89条1号・3号・4号、81条)が違憲であるとして、国に一人当たり110万円の賠償を求める「人質司法に終止符を!訴訟」の原告として東京地裁に提訴した。この訴訟は公共訴訟支援団体LEDGEが支援しており、2026年7月時点で判決は出ておらず係属中である。浅沼さんは「自分が原告になることに迷いはありませんでした」と、訴訟に加わった理由を語っている。
本件は、否認を続ける被疑者・被告人が長期の身体拘束下に置かれる人質司法の問題に加え、告発者側の単一の証言のみを直接の根拠として長期勾留・起訴が続いた点、SNS上での告発により無罪推定前に社会的な非難にさらされた点など、複数の構造的問題が重なった事案である。あわせて、当事者自身が刑事司法制度そのものの違憲性を問う公共訴訟の原告となった点でも、個別事案を超えた制度的な問題提起を伴っている。
看護師でトランスジェンダー当事者団体「TransgenderJapan」(TGJP)の共同代表を務めていた浅沼智也さんは、2023年2月、東京都内のホテルで知人女性(A氏)に背後から抱きつく暴行を加えたとされる容疑をかけられた。同年9〜10月、A氏は性的マイノリティ・女性の権利などに関わる複数団体の関係者が参加するLINEグループ内で「TGJPの関係者から性被害を受けた」と告発し、後に浅沼さんの名前が挙げられた。これを受け複数の団体が浅沼さんとTGJPへの批判を強め、TGJPも浅沼さんのメンバー資格を停止した。 2024年3月14日、青森県警は浅沼さんを強制わいせつの容疑で逮捕した。浅沼さんは一貫して容疑を否認し、約4か月にわたり勾留された。同年4月、青森地検は罪状認定を強制わいせつ罪から暴行罪に変更したうえで起訴し、罰金20万円を求刑した。 2026年1月16日、青森地裁は「被告人の暴行を直接基礎づける証拠はA氏の証言のみだが、A氏の証言は信用することができない」と判断し、無罪を言い渡した。控訴期限までに青森地検が控訴しなかったことから、無罪が確定した。代理人の西脇亨輔弁護士は、A氏の告発内容と実際の交友関係の時系列が不自然であったこと、A氏の証言と矛盾する証拠写真が存在したことを指摘し、「この写真がなかったら、えん罪のままだったかもしれない。薄氷の上を歩くような裁判だった」とコメントしている。 浅沼さんは、逮捕後の取り調べで「早く吐いてしまえば、何回も取り調べせずに済む」などと供述を促されたほか、トランスジェンダーであることに関するハラスメント発言もあったと証言している。人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは、浅沼さんが弁護人の立ち会いのないまま13回にわたり長時間の取調べを受けたことや、勾留環境において医療アクセスなどトランスジェンダー特有の処遇上の問題があったことを報告している。無罪確定後の2026年2月4日に開いた記者会見では「人質司法の怖さがよくわかった」と述べた。 浅沼さんは、自身の刑事裁判が結審する前の2025年3月、人質司法の被害を受けた他3名とともに、勾留・保釈の根拠となる刑事訴訟法の規定(60条1項2号、89条1号・3号・4号、81条)が違憲であるとして、国に一人当たり110万円の賠償を求める「人質司法に終止符を!訴訟」の原告として東京地裁に提訴した。この訴訟は公共訴訟支援団体LEDGEが支援しており、2026年7月時点で判決は出ておらず係属中である。浅沼さんは「自分が原告になることに迷いはありませんでした」と、訴訟に加わった理由を語っている。 本件は、否認を続ける被疑者・被告人が長期の身体拘束下に置かれる人質司法の問題に加え、告発者側の単一の証言のみを直接の根拠として長期勾留・起訴が続いた点、SNS上での告発により無罪推定前に社会的な非難にさらされた点など、複数の構造的問題が重なった事案である。あわせて、当事者自身が刑事司法制度そのものの違憲性を問う公共訴訟の原告となった点でも、個別事案を超えた制度的な問題提起を伴っている。
- 事件発生
- 2023年
- 被告人
- 浅沼智也(本名:浅沼智喜)
- 判決
- 強制わいせつ容疑で逮捕 → 起訴時に罪名を暴行罪に変更(求刑 罰金20万円)→ 一審:無罪 → 検察は控訴せず確定。
- 現在のステータス
- 無罪確定
- 冤罪の原因
- 人質司法、自白強要、目撃証言の問題、差別、犯人視報道
タイムライン
東京都内のホテルで、浅沼さんが知人女性(A氏)に背後から抱きつく暴行を加えたとされる。
A氏が、性的マイノリティ・女性の権利などに関わる複数団体の関係者が参加するLINEグループ内で「TGJPの関係者から性被害を受けた」と告発し、後に浅沼さんの名前が挙げられた。
青森県警が浅沼さんを強制わいせつの容疑で逮捕した。浅沼さんは一貫して容疑を否認し、約4か月にわたり勾留された。
青森地検は罪状認定を強制わいせつ罪から暴行罪に変更して起訴した。求刑は罰金20万円。
自身の刑事裁判が結審する前、浅沼さんは人質司法の被害を受けた他3名とともに、勾留・保釈の根拠となる刑事訴訟法の規定(60条1項2号、89条1号・3号・4号、81条)が違憲であるとして、国に一人当たり110万円の賠償を求める集団訴訟を東京地裁に提訴した。公共訴訟支援団体LEDGEが支援。
青森地裁は「被告人の暴行を直接基礎づける証拠はA氏の証言のみだが、A氏の証言は信用することができない」と判断し、無罪を言い渡した。
控訴期限までに青森地検が控訴しなかったことから、無罪が確定した。
浅沼さんや関係者が都内で記者会見を開き、長期勾留や取り調べでの自白の強要、トランスジェンダーであることへのハラスメント発言があったことなどを明らかにした。
事件に関わる言葉
裁判官・当事者・家族・支援者・訴追機関などによって記録・公表された発言のうち、 この事件の理解に重要なものを引用しています。
当事者発言より僕はどんな時も支えてくれた人たちの存在があったから、諦めずにたたかい続けることができました。でも、そうではない人がたくさんいる。だから、自分が原告になることに迷いはありませんでした
人質司法の被害者4名による国家賠償請求訴訟の原告として、支援団体LEDGEのインタビューに答えたもの。
出典:LEDGE「簡単に奪われた。「人質司法」に終止符を打つためのたたかい」 記事を読む ↗